駒井家住宅

ヴォーリズ建築

 昭和初期、遺伝学者の駒井卓氏と静江夫人が暮らした駒井家住宅。静江夫人がヴォーリズ夫人と神戸女学院の同窓生だった縁もあり、ヴォーリズ事務所に設計を依頼し、1927年(昭和2年)にこの駒井家住宅が建設されました。

邸宅の前には、ゆったりと疎水が流れ、緑の木々が疎水沿いに並んでいます。この邸宅が建った昭和初期には、この辺りは野原で住宅はほとんど建てられていませんでしたが、今ではこの付近は住宅街で、この駒井家宅は、住宅街の奥にひっそりと静かに佇んでいます。

玄関

玄関前をスペイン瓦で装飾されています。当初は屋根の瓦にスペイン瓦を使用する計画だったそうですが、周囲の景観に配慮し桟瓦が使用されました。そこで、使用されなかったスペイン瓦を装飾に用いたようです。玄関内部には作りつけの下駄箱、南側の下部には小さな引き出しがあります。そこには靴磨きセットなど小さなものを入れる空間で、少しの空間でも効率よく、家主が使いやすく配慮したヴォーリズの気配りが窺われます。

居間

居間には自然光が取り込まれるように東側に大きな窓の側に作りつけのソファーがあり、そのソファーの下も収納スペースになっています。平均身長より少し背の低い私でも、少し低く感じられる作りつけのソファーからは、その当時の住人、駒井卓氏と静江夫人がそれほど背が高くなかったことが窺われます。両氏が背が高くなかったのではなく、その当時の人たちが現代の私たちよりも背が低かったのかおしれませんね。居間にはピアノがあり、そのピアノはドイツ、リトミュラー社製で、結婚の際に卓氏から静江夫人に贈られたもと言われています。居間のとなりにはサンルームがあり、南向きのこの場所には自然光が入り、建物の中を明るく照らしています。

ホール・階段

階段横にあるステンドグラスは、西日を受け黄金色の日差しが階段し降り注いでいます。手すりの曲線とステンドグラスのハーモニーがその空間を芸術作品のように際立たせています。静江夫人は普段はお着物お召しになっておられたようで、着物でも上り下りしやすい段差の階段になっています。

卓氏の書斎

遺伝子博士だった卓氏の書斎には、専門書や辞書など多くの書物に囲まれています。机が窓に面して配置されており、論文執筆の合間に窓から美しい疎水の風景を眺めることができます。また、春には疎水の桜が眼下に広がり、卓氏の心を癒したことでしょう。

ベランダ

壁は足元まで一面窓で覆われているこの空間は、周りの風景が見渡せる魅力的な空間です。そこに置かれている一脚の椅子に座って、卓氏や静江夫人が読書に興じられたのだろうかと想像してしまう素敵な空間です。

まとめ

駒井家住宅の一部屋一部屋には、誰かが住んでいた息遣いが心地よく感じられました。見た目ばかりではなく、住人が住みやすいように、色々なところに収納をつけたり、段差を低くした設計になっていたりと、ヴォーリズのきめ細やかさ、優しさが詰まった邸宅でした。

現在でも通じる、収納に関する空間や周りの風景を見渡せる窓、時間によって光の入り方が変わり雰囲気を変える窓や空間など住んだ人が楽しめる工夫もありました。

また、洋風建築に偏らず、和室の設もあり、和室の内側と外側では扉を変えて取り付けるなど、空間の雰囲気を壊さない配慮も素敵でした。

【公開日】 金曜・土曜日 10時〜16時(入館は15時まで)

【入館料】一般 500円   中学生・高校生 200円   小学生以下 無料

【アクセス】叡山電車「茶山」駅下車 

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